筋・筋膜性疼痛症候群について
筋・筋膜性疼痛症候群と運動器の慢性痛
関節や神経などに痛みの原因があったとしてもその原因がすでになくなっているのに、痛みだけがずっと続いている状態や検査をしても原因がはっきりしない痛みが治らない痛みを「運動器の慢性痛」といいます。
肩こり、腰痛や関節痛などは、命に関わる病気ではありませんが、日常生活の質を大きく下げてしまうことがあります。
痛みのせいで外に出られなくなったり、身体を動かさないことで全身の体調に悪影響が出ることもあります。
当院ではこのような慢性痛の原因の大半は「筋・筋膜性疼痛症候群」であると考えています。
筋・筋膜性疼痛症候群について
筋・筋膜性疼痛症候群は、運動器(筋肉や関節)の慢性痛を特徴とする症候群のことです。
その原因は筋硬結(きんこうけつ)というしこりや、トリガーポイントという痛みの発生源が筋肉や筋膜、腱や靭帯、骨膜にできてしまっている事が原因です。
筋硬結やトリガーポイントは、MRIやレントゲンなどの画像診断では写りません。
そのため、「骨や関節に異常がない」と診断されてしまったりヘルニアや関節症などと診断されてしまっている事が多いです。
レントゲンやMRI検査では筋肉の痛みは見落とされているため、
注射や投薬などで痛みが改善しなければ手術をすすめられてしまうケースも少なくありません。
筋・筋膜性疼痛症候群の診断
筋・筋膜性疼痛症候群は専門知識にもとづいて問診や検査をおこなうことで判断されます。
代表例には、
- 特定の動作/姿勢のみで痛みがあり(運動時痛)、安静時にも持続する痛み(自発痛)ではない。
- 痛み止め(消炎鎮痛剤)や神経痛治療薬が無効/効果が持続しない
といった特徴があります。
他には、
- 関節可動域の制限
- 症状に対応した筋肉に筋硬結/トリガーポイントが触察される
など、訴える症状と筋・筋膜性疼痛症候群の特徴が一致しているかどうかで判断します。
筋・筋膜性疼痛症候群の症状
筋膜性疼痛症候群の主な症状は、
肩こりや腰痛、関節痛、神経痛モドキ、頭痛などの痛みやしびれなどです。
感じる痛み(症状)は関連痛(図の赤く塗られた領域)といい、
特定の部位に限局的な場合もあれば、複数の部位に広がる場合もあります。
またその痛みは機械痛というタイプの痛みです。
怪我のときに生じる痛み(侵害痛)であれば、炎症によって痛むため消炎鎮痛剤が効きますが、
機械痛は自己の筋肉の運動によって発生する
張力が刺激になって生じるため、消炎鎮痛剤が効きません。
筋・筋膜性疼痛症候群の治療
筋膜性疼痛症候群の治療は発生源である筋硬結やトリガーポイントに対しておこなわれます。
筋硬結やトリガーポイントの治療に有効な手段は、鍼刺入と持続圧迫です。
専門知識/検索技術を用いり、発生源である筋硬結やトリガーポイントを見つけ出し鍼/徒手・ツールを用いた刺激を加えることで、
筋硬結が軟化し、トリガーポイントは脱感作という現象により緩和・消失します。
現時点で、筋膜性疼痛症候群の治療薬は存在しないため、
筋膜性疼痛症候群に対して専門知識を有する治療が有効な手段のひとつとなっています。
※当院では「筋性疼痛症候」として症状を解説しておりますが、筋・筋膜性疼痛症候群とは基本的に同じ概念です。